そんなWysongを展示してある珍しい会社があると思ったら、新しく正規代理店となったFanimalという会社で、どうも「Rhythm(リズム)」というオリジナルフードも作っているとのこと。そしてよくよく見ると、なぜかタニタ(あの体重計のタニタ。タニタ食堂のタニタと言ってもよい)の元会長まで一枚噛んでいるようだ。
タニタ=健康=Wysong あたりまではなんとなく結びつくのだが、ただの販売代理店にしてはちょっとやることが派手だ(そもそも販売代理店はオリジナルフードなんか販売しない)。いろいろ気になったので、一度お話を聞かせてほしいとお願いしてキーマン2人に時間をもらえたのが、このインタビューだ。
果てしない安売り競争になっていたり、ほとんど「騙し」ともいえる製品がはびこっていたり、レッドオーシャン化*しているペットフードの世界に、わざわざ新規参入してくる意図はどこにあるのだろう。お二人にじっくりお話してもらおう。
*血で血を洗う競争の激しい領域を指す言葉、血の色の「赤」からレッドオーシャンと呼ばれる
Rhythm(リズム)公式サイト
Fanimal公式サイト
dogplus.me編集部(以下、dpm):
本日は、お時間とっていただきありがとうございます。犬の仕事をしていて、まさか元タニタの会長にインタビューをする機会があるとは思いませんでした。会長ご自身は、犬とか猫とかと一緒に暮らした経験はおありでしょうか。
Fanimal代表取締役会長 谷田大輔氏(以下、谷田氏):
うん、昔ね。子供のころ。何頭も何頭も犬を飼ってましたよ。
dpm:
ちなみに谷田会長が子供のころ飼われてた犬って、どんな犬種ですか?
谷田氏:
ドーベルマンとか……。
dpm:
最初に出てくるのがドベですか!
谷田氏:
あとシェパードでしょ、あとなんか大きい犬もいたな……。なんかずっと何かの犬がいましたね。
dpm:
それって、もちろんご両親が選んでくるんですよね?
谷田氏:
うん、そうです。いなくなると次の子がきてね、ずっと何かの犬がいましたよ。
でもいつだったか、子供のころだけどずいぶん物心ついたようなそんな時期――たぶん小学校の5年生だかそれくらい――に、当時家にいた犬が、僕が学校から帰ったら亡くなってて、そこからずっと僕が離れなかったことがあったみたいで、「もう犬を飼うのはやめよう」って親がそのときに思ったみたいで。
dpm:
ちょうど多感なころですしね。……にしても、失礼ですが会長が子供のときって、ドベとかシェパードって結構珍しかったのでは。
谷田氏:
そうですね。そこらにいる犬じゃなかったですね。
dpm:
じゃあ犬には子供のころからずいぶん接している、と。
谷田氏:
いやいや接してるどころか噛みつかれてましたよ(笑)。友達みたいなものなんで、走り回って遊んでは噛まれたりしてました。
dpm:
今回Fanimalという会社に深く関わったのは、そのときの体験や経験が根強く残って……という感じじゃなさそうですね、その表情を見る限り(笑)。
谷田氏:
いや関係ないわけじゃないですけどねもちろん(笑)。「人の健康を長いことやってきたんだから、次は犬もやってくださいよ」っていろんな人から言われて「確かにそうだなぁ」って。
dpm:
そういうことであれば、この年齢差のありそうな組み合わせのお二人がちょっと気になるんですけど。
Fanimal 代表取締役社長 漆原秀一氏(以下、漆原氏):
ははは。僕らは昔から、経営者の集まりだったりそういうところで共通の知り合いがいたりして、顔見知りだったんですよね。で、僕の知人がペット保険の仕事をやってまして、「もっとペットの健康に特化した会社があるといいのに」と彼が言ってて、そこからトントン拍子で話が進みまして。
dpm:
ペット保険の会社の人が言ってるあたり、生々しくていいですね。
漆原氏:
ええ(笑)。で、そうやって「よしやろう」ってなって、どういうことから始めようかなと思ってる中で「ペットは人を健康にできる」「ペットは人を明るくできる」ということに、はたと気付きまして。
dpm:
分かります。不思議な力がありますよね。
漆原氏:
おばあちゃんの家に犬と行けば、おばあちゃんは明るくなるし、いつもムスっとしてるおじいちゃんも顔がほころぶわけですよ。たぶんペットの健康と人の健康って密接にリンクしてるわけで、そこで何かが生まれるんじゃないかと思って、2年前に始めたという次第です。
dpm:
人の健康とペットの健康はリンクしているというのはよく言われることですし、犬と暮らしている私もとてもよく理解できます。でも、それを追求するにあたって、何も一番レッドオーシャンである「フード」からじゃなくてもいいのでは? と、ちょっと思ってしまったんですが。
谷田氏:
私はね、いままでずっと「人の健康」をやってきたけど、結局行き着くところは絶対に「食」なんですよね。
dpm:
すごく分かります……。カラダを作るのは日々の食事なわけですし、何はなくてもまず「食事から改善」ですよね。
谷田氏:
そう。健康というのは絶対に食から作られるんです。これは、人であっても犬であっても同じなんですよね。あとこれ言っていいのか分からないけど、飼い主さんが不健康だと、まず間違いなく犬も不健康ですね。言い換えれば、犬が健康ならきっと飼い主さんも健康です。
dpm:
ありますね。自分の管理と犬の管理ができるかどうかという話ですから。
……ということはもしかして、これは最終的に結局は人の健康につながるお話?
谷田氏:
そうです。自分のペットを健康にしてあげたい、というマインドを持っている人は、自分も健康になれるんです。散歩だって365日あったら、たまには「今日はサボりたいな」っていう日だってあると思うんですよ。でも犬のために行くわけで、それだっていいんです。飼い主も一緒に歩くわけですから。結局はペットの健康を維持するということは、人の健康を維持することにもつながるんですよね。
そういう思いでやってる……という感じでしょうか。
dpm:
やっぱり人の健康に返ってきちゃいましたね(笑)。
谷田氏:
ははは。確かにそうですね(笑)。
「犬と人を健康にするのだ」という強い思いを、オリジナルフードに込めて
dpm:
私もフード関係はそれなりに理解しているつもりですので、実は最初に御社の「Rhythm」(リズム)を拝見したときに「どこのOEMかな?」とまず思ったんです。海外の製品をリネームしてリパッケージして売ってる製品は結構ありますから。
漆原氏:
ええ、そうですね。
dpm:
でも原材料一覧表を見た瞬間に「見覚えのない並びだな」と思ったし、実際に原材料表を見ながらいろいろな製品と見比べても、存在しないんですよね。もしかして……これはオリジナルレシピなんですか?
漆原氏:
そうです。そんなこと言ってる人は初めてですが(笑)。
dpm:
わざわざオリジナルレシピを作った理由ってどういうところにあるんでしょう? 海外には、本当にいい品質のプレミアムフードはまだまだあるし、それらと契約してリパックして売れば、事業としてのリスクをできるだけ減らして犬の健康を促進できると思うんですが。
いい質問ですね。例えば弊社で扱っているこのWysong(ワイソン)。皆様ご存じのようにとても素晴らしいフードですが、これも「輸入フード」ですよね。
dpm:
はい、そうですね。
漆原氏:
日本の犬はやや太り気味の子が多いという状況と、弊社の会長である谷田の「健康」「痩せる」「ヘルシー」というイメージがくっついて、Fanimalは犬のダイエットをお手伝いすることで、犬の健康寿命を延ばして、ひいては飼い主の寿命も延ばします!……と言ったとして、扱ってる製品が海外の輸入フードだけだとちょっと弱いんですよ。なんていうか……。
dpm:
「思い」がこもっていない?
漆原氏:
そう、そうです。我々の、「犬と人を健康にするのだ」という強い思いが、どこにも込められてないんですよね。それだったら、海外の有名フードが持っているブランド力をそのまま使って、リパックだけして売るのが一番いいです。でもそれじゃないよな、と。
dpm:
それでオリジナルレシピを作ったわけですね。
漆原氏:
はい。本当は全部材料から何から全部国産で作りたかったんですけど、実はそもそもの話として、国内には私どもが納得できる製品を製造できる工場がなかったんです。
dpm:
そうだったんですね。いろんなメーカーさんに話を聞く中で、日本の工場は価格的にも技術的にもちょっと海外には劣る……というのは、ちらほら聞かれますが。
漆原氏:
なので探しまわって、イギリスの工場を一つ見つけました。OEMで山ほどの種類のフードを作っている工場なので、向こうから「こういうの使いませんか?」「こういうことしませんか?」「これを混ぜてみませんか?」っていろいろ投げてきてくれるんですよ。
dpm:
それはなかなかありがたいですが、オリジナルレシピを持ってる御社からしたらちょっとありがた迷惑ですね(笑)。
漆原氏:
いや全然迷惑ではないですが(笑)、でも「いや我々はこれを作りたくてここまで来たんです」といって納得してもらいました。
……長くなっちゃいましたが、そんなこんなで、それくらい強い僕達の「思い」を込めたかったというのが、オリジナルレシピにこだわった理由です。
谷田氏:
いまは世の中に、ペットが食べるものもあふれてますから、そんな中で「Fanimalのお墨付きだから安全だね」というそういう選び方をしてもらえるような品揃えにできたらいいですね。その最初のチャレンジがRhythmなんです。
なるほど、Fanimal推薦のフードであれば、安心・安全である、と。「Wysong」とか「Balanced Life」とかを扱っているのはそういう理由なんですね。Rhythmも、その商品群の中の一つである、と。
漆原氏:
Rhythmは、日本国内だけじゃなくて海外展開も将来的にやりたいと思ってますから、そういう野望もあって、オリジナルレシピを持っておいたほうがいいという判断になったわけです。
dpm:
確かに自前でレシピを持っていれば、商品展開が自由自在ですからね。
漆原氏:
そうなんです。グレードを上げたバージョンを作りたいとか、中身を変えて横展開したいとか、そういうときにオリジナルレシピがあるのとないのとでは大違いなので。
「本当にいいものを届けたい」という信念でやっているので、広がるまで時間はかかると思う
dpm:
レシピを決めるのって、どれくらいの時間がかかるものなんですか?
漆原氏:
うーん……栄養士さんに入ってもらって、「あれを入れたらバランスが崩れる」とか「あれを入れないと腸の環境が悪くなる」とかあれやこれやいろいろ……どれくらいかかったかな……半年以上はかかってるはずですよ。
dpm:
もうちょっとテンプレみたいな組み合わせがあるのかな、と思ってたんですが割とかかりますね。
漆原氏:
しかも今回は我々もこだわりが強いものですから、「あれは入れないでくれ」とか「こういうのを入れるのはやめよう」とかいろいろ言ってまして余計に(笑)。
dpm:
ちなみに「入れないでくれ」って言った原材料はどんなものですか?
漆原氏:
穀物と、あとはさつまいも、じゃがいも、卵、ですね。
dpm:
GI値ですね。
漆原氏:
はい、そうです。でもそういうところまでこだわると、今度は栄養士の先生もそういうのを作ったことがなくて、発泡がうまくいくのかちょっと分からないみたいな話になりまして……。
dpm:
そうか。普通にエクストルーダー*ですもんね。
*原材料に非常に高い圧力をかけて、わずかな隙間から押し出して膨らませる成形方法。ペットフードだけでなく、お菓子やパスタ、ベビーフードなどでも使われている。
漆原氏:
そうです。レンズ豆とかの豆類を結構入れてるんですが、そうするとご承知のように繊維質がとても増えるので、発泡がうまくいかないんですよね。
dpm:
それはそうでしょうねえ。
漆原氏:
なのでなかなかチャレンジに満ちたレシピになってると思います。工場の人にもとてもよく協力してもらって、形状がまとまるくらいの調整をしてもらって、最終的にようやく完成した次第です。
dpm:
裏書きを見た程度ですが、カルシウムとリンの配合比率なんかもキッチリ作ってあるし、「あぁこれは相当真面目に作ってるんだな」というのは理解できましたが、そこまでこだわっていたとは。
漆原氏:
ありがとうございます(笑)。
dpm:
でもこれ、あまりにもキッチリ作りすぎていて、特徴がないフードになっちゃってる気もするんです。
これだけ世の中にドッグフードがあふれている状況で、犬の食を真面目に考えている人に対してRhythmという製品をキチンと届けて、フード産業の中で適切なポジショニングをするためには、何が必要だと思いますか?
漆原氏:
なかなか難しいこと聞きますね……。いやおっしゃることは分かりますが。
dpm:
フードって、カスタマー側にもあまり知識がないことが多いので、適当なもの入れて騙したり誤魔化したりする製品が結構多いじゃないですか。
漆原氏:
奇をてらった原材料を入れて、それを売りにしてみたりとかね。
dpm:
そうですそうです。まさにそういうものを念頭に置いてしゃべってます。そんな中で、やはり「ちゃんとしたフード」はちゃんと目立ったほうがいいと思うんですが、今のままだとちょっと真面目すぎて地味かな? という懸念がありまして。
漆原氏:
そこは……メディアの質問に対する適切な答えなのかどうか分かりませんが、僕達は「本当にいいものを届けたい」という信念でやっているので、時間がかかるかもしれないけど、地道に真面目にやるしかないな、と思っています。
幸い谷田がいるおかげで、「健康管理」とか「体重管理」とかのイメージが湧きやすいので、そういうところから切り込んでいくしかないかなぁ、と。
dpm:
なるほど。
漆原氏:
よくご存じかと思いますが、フードって「これを入れたら劇的に何かが変わる」みたいなものは存在しないと思っているので、辛抱する期間がちょっと必要かもしれませんが、真面目にRhythmを広げていこうと考えてます。
飼い主が知識を得れば、犬はもっと健康になれるはず
dpm:
そうはいっても、実は飼い主さんの中でも犬の食事や栄養に詳しい人ってほとんどいないので、「真面目なフード」を広げていくのはなかなか至難の業だと思います。
漆原氏:
なるほど。
dpm:
「食から何かを変えましょう」っていうメッセージが半端に伝わると、たぶん良くない方向に行っちゃう気がするんですよね……。栄養バランスを一切考えていない手作り食とか。というかそもそも、それ以前の段階であることも多くて、例えば「ウエイトコントロールのフード」ってありますけど、あれを使ってウエイトコントロールできてる人なんてほとんどいないと思いますよ。
谷田氏:
そのぶんあげちゃうんだよね。
dpm:
そうなんです……。「ウエイトコントロール」が出来ない飼い主だから犬が太ってるのであって、フードを変えたからって痩せるわけがないんです。
谷田氏:
ホントそうなんですよね。人間の肥満についてずいぶん長いことやってましたけど、人間の肥満は、本人が選ぶものだからつい好きなものばっかり食べちゃったりとかして皆さん苦労なさってるんですが、だからFanimalをやる前は、犬なら簡単だろうと思ってたんですよ。
dpm:
極論で言うなら、あげなきゃいいだけですからね。もちろんそんなことはしませんけど。
谷田氏:
そう、そうなんです。でも全然ダメですね。可愛くて仕方ないからみんなすぐあげちゃう。「ちょっとくらい大丈夫だろう」とかいって。そういう人が家族に一人いるだけでもうダメですね。
dpm:
大体そういうのはお父さんがダメなんですよね(笑)。
谷田氏:
ははは、そうそう(笑)。いつもお父さんが甘い(笑)。
dpm:
その一切れが全然大丈夫じゃないっていうのが、なかなか分かってもらえないんですよね。
谷田氏:
だから本当は「飼い主の教育」のほうが先なんですよね。それだけで犬の健康は大きく改善されると思いますよ。
dpm:
可愛いからなんでしょうけど、可愛がる方向が違うんですよね……結局それは寿命を短くしてるだけだという。
谷田氏:
そう、そうなんですよ。それでいいんですか? と聞きたいですね。本当に大切なら、ちゃんと飼い主がハンドリングして長生きさせてあげてほしいです。太ったら内臓に多大な負荷がかかりますから、人も犬も、太ったら確実に長生きしないんです。
漆原氏:
犬については、「太った犬は、理想的な体型の犬に比べて寿命が2年短い」というのはもう研究結果で出てますからね。
dpm:
エビデンスがあるのは初耳でした。それにしても、15年しかない寿命のうちの2年ですか……。
漆原氏:
そうですよ。しかもその研究は大型犬でやっていたので、15年もないと思います。確かPurinaの研究だったと思うんですが、ちゃんとそういうエビデンスも出てしまっています。なのでそういうことをまず理解したうえで、可愛い愛犬の健康をちゃんと気遣ってあげてほしいですね。
dpm:
おっしゃるとおりです。
谷田氏:
でも思うんだけど、みなさん意外と、自分の犬が太ってるということに気付いてないことが多いんじゃないですかね?
漆原氏:
言われてみれば確かにそうかもしれません。
dpm:
ウチの子は普通である、と。
谷田氏:
うん、意外とそういうのも大きいんじゃないですかねえ。「これくらいが普通でしょ?」って。
dpm:
確かにそうですねえ。まぁそもそも人間感覚で食べ物あげるのも間違ってますが。
漆原氏:
体重比の話ですか?
dpm:
ええ。60kgのお父さんと5kgの愛犬では、食べ物の価値が12倍違うというアレです。ケーキをひと口だけあげたつもりでも、それは犬にとって「ケーキ1個丸々」あげたのと同じだというのが理解されてないな、と思います。
……とまぁそういうことを含めて、ぜひFanimalさんがいろいろな事業でよろしくお願いしますということで。
谷田氏:
え、それもやるんですか(笑)。
dpm:
セミナーを開くとか。
漆原氏:
セミナーもいいんですけど、セミナーに来てくれるような人達は……。
dpm:
そもそも「分かってる」んですよね。
漆原氏:
そうなんですよ(笑)。なので知識を広げていくというのは本当に難しいことだと思います。
根拠のない過度な表現でお客さんを釣って、騙すような商売はしたくない
dpm:
ちょっとRhythmに話を戻すんですが、AAFCOの基準に則ってないですよね。とくに問題というわけじゃないんですけど、ちょっと珍しいなと思って。
漆原氏:
あ、それは簡単なことで、イギリスで作ってるからなんです。
dpm:
そういえばそうでした……。だからFEDIAF準拠なんですね(FEDIAF=欧州ペットフード工業会連合)。
漆原氏:
もちろんAAFCOの基準にも準拠してるんですけど、製造がヨーロッパなもので。それだけの理由です。
dpm:
あと気になってるのは、「サーモン」と「トラウト」を分けて書いてありますけど、たぶん普通の人はその違いはほとんど分からないのでは……。
漆原氏:
そう……ですね。そうかもしれません。でもやはり「違う原材料」ですから、そこはキチンと分けて書きました。
サーモン(サケ)と一口に言っても、その種類は多岐にわたる。これを機にぜひ学んでおこう |
そういうとこからして真面目に作っているのだなぁ、と思いました。ちなみに公式サイトに表記が見当たらなかったんですが、サーモンはどこ産ですか?
漆原氏:
ノルウェーとイギリス、EUです。
dpm:
じゃあよかったです。アメリカ産のサーモンが絡んでくると、やはり「遺伝子組み換えサーモン」とかが気になりますし。
漆原氏:
それは使ってないですね。でも「天然」と「養殖」は、養殖を選びました、と正直にお伝えしておきます。
dpm:
いや、自分が食べるものではないんですから、そこは養殖を選ぶべきでは。生産の持続性が失われるのは製品として致命的ですから。
漆原氏:
そうなんですよ。ご理解いただけて嬉しいです。
dpm:
しかし肉類を使わなかったのはなぜですか? 一番「理解されやすい」フードが作れると思うんですが。
谷田氏:
まず「犬の健康」を考えたときに、オメガ3は外せないかなと思いまして。それが自然に摂取できる原材料ということで、まずサーモンからいこう、と。
dpm:
さまざまな効能があると言われてますしね。アレルギーやら痴呆やら。
谷田氏:
そうです。アレルギーも痴呆も、最近の犬にすごく増えていますし、きっと健康維持に貢献できるのではないかと思っています。オメガ3が犬の脳の健康維持をサポートするというのも、どこかの研究であったと思います。
漆原氏:
その研究は確かヒルズ社だったかなと。ちょっと昔の話なので、違っていたらすみません。あとはさっき出た話にもつながりますが、レッドオーシャン化してるドッグフード業界で、少しでもいい位置に製品を置こうと思ったら、やはり差別化を図る必要がありますから、そういう意味でも「まず最初は魚でいこう」となりました。
dpm:
おっしゃることはよく分かるんですが、それにしても大胆に入ってますよね。オメガ3が4.6%って……そんなフードほかにありましたっけ?
漆原氏:
1つくらいあったかもしれませんが、ほぼ「ない」といっても過言ではないと思います。
dpm:
ですよね。こんなに入ってるのは見たことないです。でも「魚」で「オメガ3」であれば、いまだにプチブームが続く柴犬に対してもっと強くプッシュすればいいのに、と思うんですが。
漆原氏:
もちろん今後はどんどんプッシュしますよ。さすがにいろいろご存じなんですね(笑)。
dpm:
公式サイトが控えめすぎて、いろいろもどかしくて(笑)。
漆原氏:
いやあ……根拠のない過度な表現でお客さんを釣って、騙すような商売はしたくないので。
dpm:
よくありますよね、そういう製品。あの手この手で釣りまくりです。
漆原氏:
ありますね(笑)。でも僕らはああいうことはしたくないので、違う方法でがんばります。
最初は、分かる人にしか分からない良さかもしれないけど、続けていけば「やっぱりこっちの製品のほうが全然いいね」って思ってもらえるように、まぁきれいごとかもしれませんが、そういう風に進めていってます。
dpm:
あえてイヤらしい言い方をしますが、そのへんのフードに「タニタ元会長推薦!」っていうシールを貼ってホムセンに並べるだけで、そこそこ売れると思いますよ。
谷田氏:
いやいやそんなことないでしょう(笑)。
漆原氏:
いや売れますよたぶん。
dpm:
ですよね。ビジネスとしてはそっちのほうが全然うまく回るじゃないですか。こんな苦労しなくても。
漆原氏:
まったくおっしゃるとおりです。でもそれをやって何が残るのかというと……何も残りませんよね。
dpm:
まぁ売り上げと利益くらいですかね。ビジネスですからそれも大事ですが。
漆原氏:
はいもちろんです。でも僕らがいまやりたいのはそういうことじゃなくて、ちゃんと地に足付けて犬の健康に貢献したいと思っていますし、だからこそよく分からない苦労までして、地道に真面目にやっているわけです。
dpm:
元VC(ベンチャー・キャピタル)の人とは思えない発言で素敵です。
漆原氏:
「こんなんパパッとシール貼ってガンガン広告打ってうまいこと定期で買わせとけ」みたいな?(笑)
dpm:
ですです(笑)。
漆原氏:
ははは(笑)。まぁそういうことはしたくないですね。時間かかりますけどがんばりますよ。
dpm:
このあとの展開はどんなことを考えてます? もし話してもよいことがあればぜひ。
漆原氏:
次はトッピングかなぁ、と思ってます。フードにプラスする感じの。
dpm:
あぁなるほど。ちょっといいですね。
谷田氏:
ウチのフードを使わないとしても、Fanimalが勧めるトッピングなら安心、みたいなブランドを作っていきたいですね。
dpm:
ブランドができれば、そのあとの展開もやりやすいですしね。
漆原氏:
はい。とにかく「ペットの健康」という軸をぶれさせることなくブランディングしていきます。
dpm:
そしてそこに至るまでの長丁場の勝負であることは覚悟を決めてる、と。
ではこのあともがんばってください! 本日はありがとうございました。
*2018年8月28日収録